主人公は、親が聴覚障害者で自分は多少手話ができるという設定以外は普通の人間なので、日本にいる大多数のコーダの日常を垣間見るような映画だった。その実情は、健常者の家族と変わりなかった。『エール!(2014)』や『コーダ あいのうた(2021)』を観て、コーダを特別視していたけど、この映画でコーダは普通の人間だということが分かった。
・主人公の祖父母が手話を覚えようともしていないことに驚いた。調べたら、聾学校では1990年代まで手話禁止となっていたらしい。禁止する理由はいろいろあったのだろうけど現在では、禁止するということはあり得ないことだと思う。
・言うなればこの映画は、平凡な人間の前半生を淡々と綴った起伏の乏しい映画だけど、自分にとっては『コーダ あいのうた(2021)』より泣ける映画だった。
・主人公のようにやりたいことが見つからずフラフラしたことがない人にはピンとこなかったかもしれないが、多くの人は共感できたはず。
・主人公の父親が劇中で「どの家庭にもそれぞれ問題がある」と言っていて、それがこの映画の根幹だったと思う。健常者だけの家庭にはトラブルがないのかと言えば、もちろんそうとは言えない。つまり聴覚障害者だから健常者とは違う家庭になる、というわけではない。
ストーリー
宮城県の小さな港町。耳の聞こえない両親のもとで育った五十嵐大は、幼い頃から母の“通訳”をすることも普通の楽しい日常だった。だが、次第に特別視されることに戸惑い、母の明るささえ疎ましくなる。20歳になった彼は、逃げるように東京へ旅立つが…。 (U−NEXTより引用)